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日本人はお金の知識(ファイナンシャルリテラシー)がないと言われます。確かに、経済学部を卒業し、証券会社で働きながら、独自に保険や不動産投資を研究してきた私の目から見るとあまりに周りの人たちのお金の知識がないことに驚きます。一方で、そんな人たちは、ホントはお金の知識を身に着けたいと言います。でも、どう学べばいいかわからないと…。そんな人たちのために、さまざまな切り口でお金の知識を提供し、少しでも賢くお得に生きてもらおうというのがこのブログの目的です。

オルタナティブ投資(代替投資)のイロハ

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金融市場が波乱になるたびに、オルタナティブ投資に注目が向かいます。

聞いたことはあるかもしれないが、実際よくわからないオルタナティブ投資

そんなオルタナティブ投資について詳しく解説します。

オルタナティブ投資とは?

オルタナティブとは、代替の、あるいは、伝統的な方法をとらない、という意味です。

投資の世界においては、上場株式や債券などのような資産を伝統的資産と呼びます。

そのような伝統的資産とは異なる資産に投資したり、従来とは違う運用手法を採用することをオルタナティブ投資と呼びます。

典型的な投資対象としては、ヘッジファンドプライベートエクイティなどの未公開企業の株式や鉄道などのインフラ、金や石油といった商品、不動産などの実物資産が挙げられます。

米国では、富裕層を中心に古くから活用されていましたが、1980年代から一部の機関投資家も導入しました。

2000年に米国のITバブルが崩壊した頃からは欧米の年金基金が積極的に運用を始めました。

その後、米国同時多発テロをきっかけに株式や債券などの資産が一斉に値下がりしたことで、オルタナティブ投資は注目を集めました。

日本におけるオルタナティブ投資の歴史と現状

日本では、1997年のアジア通貨危機以降の低金利下で運用難に直面した金融機関などがヘッジファンドへの投資を増やしました。

それによって、オルタナティブ投資の認知度が高まりました。

期待成長率や長期金利の低下が続く日本では、機関投資家の間でオルタナティブ投資への関心は一段と高まっています。

以前は、機関投資家などの一部のプロ向けの投資商品でしたが、最近では小口投資可能な商品も登場し、個人投資家の間にも少しずつ広まっています。

近年は、世界的な債券利回りの低下も関心を集める大きな要因になっています。

大和総研が2015年に実施した調査では、回答した年金基金の7割超が代替投資を実施しているという結果も出ています。

実施を検討している基金も1割弱あるなど関心は高まっています。

オルタナティブ投資のメリット

オルタナティブ投資の投資戦略は多種多様です。

しかし、一般に

  1. 株価などの指数と比べた評価ではなく、全体収益を追求する
  2. 伝統的手法とはリスクとリターンの特性が異なる手法を導入して、分散投資の効果を高める

という点がオルタナティブ投資のメリットと言われます。

株式や債券などの一般的な運用資産の価格変動との相関性が低いため、リスク分散にも効果があるのです。

一方で、流動性が低く、リスクが比較的高い資産が含まれる点がデメリットです。

ただし、その分、高めの利回り画期待できます。

オルタナティブ投資の投資手法

米国などでは、ヘッジファンドに加えて、未公開株に投資するプライベート・エクイティインフラ不動産コモディティ(商品)などさまざまな手法が定着しています。

投資手法主な内容
ヘッジファンド 株式ロングショート
イベントドリブン
グローバルマクロ
CTA(商品投資顧問)
プライベートエクイティ バイアウト
ベンチャーキャピタル
企業再生
インフラ 発送電
道路
空港
港湾
上下水道
エネルギー関連設備
通信施設
不動産 上場REIT
私募REIT
私募ファンド
コモディティ 天然資源
金・原油・農産物などの商品
その他 プライベートデット
インフラデット
クレジット
保険関連商品
デリバティブ金融派生商品
証券化商品

ヘッジファンド

ヘッジファンドの投資手法

ヘッジファンドの投資手法で代表的な戦略が株式ロングショートです。

それ以外にも、

イベントドリブン:買収や倒産など企業に関連する重要なイベントを投資機会とする

グローバルマクロ:各国・資産間のマクロ的な不均衡に注目する

レラティブバリュー:資産間の価格差に注目して市場動向の影響を極力排除する

などがあります。

伝統的な運用との違い

実際の戦略は、ファンドごとに多種多様ですが、すべての戦略に共通するのは、市場動向に左右されない絶対収益の獲得を目指すということです。

そのために、値上がり期待で資産を買うだけでなく、値下がりに備えた空売り(ヘッジ)でも利益を生み出そうとします。

ここが伝統的なアクティブ型の株式運用との大きな違いです。

伝統的なアクティブ型の株式運用では、値上がりが期待できる割安銘柄を複数購入して、東証株価指数TOPIX)などのベンチマークを上回る成績を目指します。

値下がりが予想できる銘柄は、保有しないという消極的な選択肢しかありません。

TOPIXのような時価総額を加重平均した指数がベンチマークの場合には、時価総額小さい銘柄をもたなくても運用成績にはほとんど影響しません。

これに対して、空売り(ヘッジ)を用いるロングショート戦略では、時価総額に縛られずに、ネガティブな情報も活用して空売りを仕掛けますので、さまざまな銘柄への投資機会が広がります。
ヘッジファンドのコスト

ヘッジファンドは投資アイデアを可能な限りパフォーマンスに活かす運用を目指しています。

しかし、高度な運用には高い運用コストがかかります。

信託報酬で年2%、成功報酬で20%程度のコストが一般的です。

このような高いコストは、投資資金から取られていきますので、投資資金が食いつぶされてしまいます。

このようなヘッジファンドの高コスト体質は、ヘッジファンドへの逆風となりかねません。

CTA(商品投資顧問)

金融市場が荒れたときに特に注目されるのが、CTAです。

CTAは、コモディティ・トレーディング・アドバイザーの略です。

かつては、その名の通り、投資対象は商品市場に絞られていて、運用担当者が将来の需給予想を重視して投資する裁量型が中心でした。

しかし、今では、システム型が主流になっています。

システム型では、運用プログラムをあらかじめシステム化して、それに基づいて株式や債券など幅広い資産に投資します。

あくまで商品は投資対象の1つという位置づけです。

CTAでは、相場の上昇局面で買い、下落局面で売るという相場のトレンドに追随して利益を確保するトレンドフォロー型の戦略が多いです。

人間の判断ではどうしても割安で買うという判断に傾きやすく、下げ局面では苦戦を余儀なくされますが、トレンドフォロー型の戦略のCTAでは、世界経済や企業業績は関係ありません。

コンピュータが市場の値動きから過去のパターンを分析して、方向性に追随して先物で買いや売りの注文を機械的に出します。

相場が下げ続ける限り、コンピュータが売りポジションを維持する指示を出し続けるので、下落局面でも利益が狙います。

これが金融市場が荒れたときでも利益を出せるCTAの特徴です。

CTAは株式や債券といった伝統的資産との相関が低く、運用資産のリスク分散が期待できます。

一方で、方向感がはっきりせず、値動きが限られた相場では苦戦しやすいのが弱点です。

プライベートエクイティ(PE)

プライベートエクイティ投資は、オルタナティブ投資の中でも、ヘッジファンド、不動産と並ぶ主要な戦略の1つです。

非上場企業の株式を取得して、成長の促進や事業の効率化を通じて、企業価値の増大を図るのが一般的な手法です。

企業価値を増大させた後に、新規株式公開(IPO)か他社の事業売却で獲得するキャピタルゲインが主な収益の源泉となります。

プライベートエクイティ投資では、投資先の成長段階と出資比率によって分類されます。

バイアウト戦略

バイアウト戦略は、プライベートエクイティ投資において主流の戦略です。

ニュースなどでプライベートエクイティが話題になる場合には、この戦略を指していることが多いです。

プライベートエクイティは、経営への参画を通じた事業の拡大や再編、構造改革などによる付加価値の創出を目的とした投資です。

投資先企業の経営支配権を取得して、上場企業を非上場化する事例もあります。

事業承継への対応も対象になります。

ディストレスト戦略

1990年代のバブル崩壊後には、ディストレスト戦略も目立ちました。

事業再生ファンドと呼ばれることもあります。

事業の抜本的な再生や解体につながる戦略のため、こちらも経営支配権を握るのが通常です。

ベンチャーキャピタル(VC)戦略

対照的に、ベンチャーキャピタル戦略は、新興企業に投資します。

一般に少額出資で、スタートアップ企業への企業支援を含むこともあります。

グロース戦略

グロース戦略は、ベンチャーキャピタル戦略とバイアウト戦略の中間に位置します。

ベンチャーキャピタルと違い、投資先企業は黒字基調である場合が多く、バイアウトと異なり、支配権は取得しない投資手法です。

日本におけるプライベートエクイティファンド

日本でも多くのプライベートエクイティファンドがありますが、経済規模や株式時価総額、企業数などは欧米に比べると相対的に小さいです。

企業の成長段階ごとの多用な資金ニーズに応えるためにも、今後の発展が期待されます。

インフラ投資

インフラとは、インフラストラクチャーのことで、道路・鉄道・港湾・ダムなど産業基盤となる社会資本のことです。

最近では、学校・病院・公園・社会福祉施設など生活関連の社会資本も含められます。

歴史的に政府や公的部門が整備、提供して、利用者が税金や利用料金として対価を支払ってきました。

1990年代になると、インフラの整備に民間資金が活用されるようになりました。

オーストラリアなどがその先駆けです。

その後は、資金提供だけでなく、インフラ開発や運営など民間が担当する分野が広がっています。

こうしたインフラへの投資では、インフラ資産の所有権や運営権を取得します。

投資リターンの源泉は、インフラ資産の運営による収益と、事業の売却の2つからなります。

インフラ投資の主な投資対象

インフラ投資において、次のものが投資対象となります。

 公益:送配電、上下水道、ガス供給、ごみ処理

 交通:有料道路、鉄道、港湾、空港

 エネルギー:従来型発電、再生可能エネルギー、石油・ガスパイプライン、貯蔵施設

 通信:通信タワー、基地局、ケーブルネットワーク、通信衛星

 社会インフラ:学校、病院、刑務所、裁判所

インフラ投資とプライベートエクイティ投資の違い

インフラ投資は、プライベートエクイティ投資と似ており、インフラ投資はプライベートエクイティ投資の一形態とも捉えられます。

ただし、プライベートエクイティ投資は売却益が収益の中心であるのに対して、インフラ投資では投資期間中に継続的な運用収益が期待できるのが特徴です。

この点が、長期投資家にインフラ投資が注目されている大きな要因です。

インフラ投資をする方法

インフラ投資にあたっては、専門のファンふぉに資金を投じる手法が一般的です。

その投資ファンドや運用会社、さらにファンドの投資案件は従来、海外が中心でした。

ただ、国内でも再生可能エネルギーや空港、有料道路などインフラ資産の投資対象は増えています。

東京証券取引所が創設したインフラファンド市場への上場も始まるなど、発展が望まれています。

不動産

不動産に投資する方法としては、次の4つがあります。

上場不動産投資信託は、日本でも広く知られている投資対象で、上場していることもあり、上場株式として整理されることもあります。

直接投資は、生命保険会社が各地に商業不動産ビルを保有しているような例が挙げられます。

オルタナティブ投資という面では、私募REIT私募ファンドが主な対象となります。

私募REITの特徴

日本では、リーマン・ショック以降、私募REIT機関投資家に広がりつつあります。

上場REITに比べて

  • 最低投資金額が大きい
  • 株価との相関性が相対的に低い
  • 流動性が限定的

という特徴があります。

不動産ファンドの運用手法

不動産ファンドの運用手法は、リスクとリターンの特性に沿って分類するのが一般的です。

コアと呼ばれる手法は安定収益の獲得を目指し、オポチュニスティックと呼ばれる手法は積極的な売却益の獲得を追求します。

また、その中間的な手法もあります。

不動産ファンドの投資対象

不動産ファンドの投資対象は、次の4つです。

  • オフィス
  • 商業施設
  • 住宅
  • 物流施設

いずれかの対象に特化したファンドもあれば、幅広い案件に分散投資するファンドもあります。

米国の不動産ファンド

米国では、不動産投資のベンチマークとして、全米不動産投資受託者協会(NCREIF)の指数が普及しています。

そのうち、オープンエンドで分散投資をするコア型の不動産ファンドを対象にしたODCE指数を見ると、リーマン・ショック時に大きなマイナスリターンを記録しています。

しかし、その後は回復して、過去最高値を更新しています。

このように公に提供される指数が活用できるのは、オルタナティブ投資において特徴的です。

保険リスク証券

保険リスク証券とは、自然災害や巨大保険事故、死亡率の変動などの保険リスクを引き受ける証券です。

対価となるリターンは、株式や債券はもとより、不動産や商品、マクロ景気の変動とも相関が低いという特徴があります。

保険リスク証券は、取得するリスクの性質が他の投資戦略とは大きく異なるため、保険戦略を専門とするファンドを通じた投資一般的です。

投資するファンドの選定にあたっては、過去の実績以上に、ファンドの投資哲学やリスク選考度合いが投資家の意図にかなっているかを見極めることが重要です。

保険戦略専門のファンドは、大きく分けて次の2つがあります。

  • CAT債ファンド
  • 担保付き再保険への投資を主とするファンド
CAT債ファンド担保付き再保険への投資を主とするファンド
目標リターン 低め 高め
リスク 低め 高め
流動性 高め 低め
透明性 高め 低め
運用手数料 低め 高め+成功報酬
CAT債ファンド

CAT債ファンドは、大災害債券のみに投資するファンドです。

担保付き再保険への投資を主とするファンドに比べて、流動性や透明性は高く、ローリスク・ローリターン型です。

担保付き再保険への投資を主とするファンド

CAT債ファンドに比べてハイリスク・ハイリターン型で、運用手数料率も高めに設定されています。

運用会社によっては、複数ファンドを設けて、両方のタイプを用意している場合もあります。

世界の損害保険市場

世界の損害保険市場では、取引の大きな割合を米国のハリケーンリスクが占めています。

保険戦略ファンドもそのリスクに偏る傾向があります。

2005年のハリケーン・カトリーナ以来、10年余り大規模なハリケーン損害に見舞われていないため、保険戦略ファンドの運用やリスク管理の巧拙は、各ファンドの過去の実績からは読み取りにくい状態が続いています。

オルタナティブ投資の投資形態による分類

投資家の数による分類

運用会社は通常、複数の投資家から資金を集めて共同ファンドを運用します。

その場合、投資家は事前に決まったファンドの条件に従います。

一方、個別の投資家向けの専用ファンドでは、運用会社とその投資家との間で条件を決めます。

個別の投資家向けの専用ファンドは、オーダーメイドの運用ができますが、一般に数十億円から100億円以上の投資金額が必要となります。

投資するファンドの数による分類

投資するファンドの数に着目して分類することもあります。

複数のファンドを束ねて1つのファンドとして提供するのが、ファンド・オブ・ファンズ(FoF)です。

個別のファンドを調査、選定、管理する労力が省かれて、比較的少額で多くのファンドに分散投資できるメリットがあります。

反面、ファンド・オブ・ファンズへの報酬が必要で、組み入れファンを選べないというデメリットもあります。

これに対して、シングルファンド投資は、個別のファンドに自身で投資するため、ファンド・オブ・ファンズとは逆のメリット、デメリットが考えられます。

募集形態による分類

プライベートエクイティや私募不動産、インフラなどは独特の募集形態をとります。

クローズドエンドと呼ばれる当初募集のみで、追加募集や途中解約は原則的に認められません。

戦略にもよりますが、運用期間は主に10年前後です。

クローズドエンドと逆に、追加募集や途中解約が認められる募集形態をオープンエンドと呼びます。

投資時期による分類

募集期間中にファンドを買い付けることをプライマリー投資と言います。

一方、募集期間後に、投資家が相対でファンドの持分を売買するのはセカンダリー投資と言われます。

投資形態による分類

案件の規模が巨大であれば、運用会社がファンドの投資家に共同投資を持ちかける場合もあります。

共同投資は、運用会社への報酬が軽減、免除されやすく、効率のよい投資機会となり得ます。

ただし、案件の評価や管理は投資家自身の目利き力が重要になります。